AprilTag 強み/弱み/活用案

IXEの古賀です。最近 多方面からAprilTagに関する組み込み相談等ありますので、今回AprilTagの強み・弱み、IXEが考える活用案を共有します。是非、プロジェクトへの活用可否判断頂ければ幸いです。

2024/10/11 一部コメント追記

AprilTagとは

ARマーカーの一種で、アメリカのミシガン大学(University of Michigan)の研究チームによって開発されました。AprilTagは、特定の物体の位置と姿勢を検出するために使用されるビジュアルマーカーシステムです。これらのタグは2次元のバーコードのようなパターンで、各タグには固有のIDがあります。カメラを通してこれらのタグを認識することで、物体の3次元の位置と向きを高精度に推定することができます。

AprilTagは、ロボット工学や拡張現実などの分野で広く利用されており、その信頼性と高い認識率が評価されています。また オープンソースで提供されているため、多くの研究者や開発者によって使用され、改良され続けています。

文書より下記記事に、検出状況の動画を掲載していますので、参照頂ければ早いです。
高精度タグ認識技術AprilTagの検証とその可能性
高精度タグ認識技術AprilTagを用いた距離検知

QRコードは情報量に重きを置いているのに対し、AprilTagは検知能力に重きを置いているイメージです。まとめると、”カメラを用いた検知技術”と理解してください。

AprilTagの強み

1.高精度な検出能力
  物体の位置と姿勢を検出可能です。下記動画から、多少の歪み・角度・動きがあったとしても検知できていることが分かります。

2.リアルタイム性
  処理が軽く、高速な認識が可能です。QRコードに比べ、情報量は少ないですが高速に検知することができます。
  AIの画像処理による識別に比べ、柔軟性はありませんが低スペックコンピュータでも動作します。ただし、コンピュータ性能・ネットワーク性能・カメラ性能 いずれかのボトルネックに大きく影響しますので、必ず実機にて確認を行いましょう。

3.柔軟性
  様々なサイズや環境で使用可能です。下図は手書きの布に印字したタグを読み込んだ時の状況です。多少の歪みでも検知できていますね。
  

4.オープンソース
  広範な研究・開発コミュニティによるサポートが可能です。もちろん、各種ライセンスには注意を払う必要がありますが、オープンソースで使用できるのは利点です。興味ある方はミシガン大学のAprilTagに関するホームページを閲覧してください。
  https://april.eecs.umich.edu/

5.ロジック処理による明瞭さ
 AIの画像処理については、認識しない”理由”が不明確な場合が多々あります。また、認識させるためのチューニングコストが発生しますが、AprilTagは単純な仕組み故に読み込めない理由が明確になりやすく、対策もしやすいといった特徴があります。

6.距離/角度検知
 距離や角度の検知がしやすいのも特徴です。物体に張り付ける事で、距離計算も容易です。下の動画を参照してください。


7.安価にセンシングできる
  用途や既にあるインフラ状況・現場環境にもよりますが、カメラが既に備わっている場合は安価に機能構築できる可能性を持っています。

AprilTagの弱み

1.照明の明暗
  照明の変動がある場合など、認識を誤る場合があります。ですので、時間帯によっては日の指すところや、照明が反射する箇所は注意ください。屋外などは明るさが比較的均一ですので安定しやすいです。AprilTagは検知処理の際に、”グレーススケール変換処理”を行うのですが、そこで白黒逆転が発生しタグの読み込みに失敗するために発生します。下図は光の反射や影の状況によって、検知有無が変わるイメージを示しています。

2024/10/11 コメント追記 カメラの性能 及び 処理コンピュータスペック、画像前処理等を適切に行うことで読み取り率を上げることが可能。

2.精度を上げるにはそれなりの配慮が必要
  いくら処理が早いからと言って、精度を上げたり高速な動体の検知にはそれなりのコストを要します。特に動体や遠方のタグまで検知したい場合は、カメラ側に求める性能が上がります。安いカメラだと、ゆっくりした動体しか検知できません。今回の検証動画などがいい例ですね。少し早い動作をすると残像で検知に失敗してしまっています。

3.専門性
  検証段階では簡単に検知できます。しかし、最大限の効果を得るためには、画像処理調整やカメラ調整等の専門知識が求められる場合があります。
  実務で高精度に使用したい場合は、各現場でのチューニングは必須となります。ただ、精度を求めない場合はお手軽に使用することができます。


4.活用するには開発が必要
  AprilTagという、検知や測定に特化したARタグは汎用的ではないため、要件に応じた開発が必要と考えています。汎用性でいうなら、AIやQRコードのほうが活用しやすいですね。

活用例

  1. ロボットのナビゲーション: ロボットが環境内を正確にナビゲートするために、AprilTagを目印として使用します。ロボットはこれらのタグを認識し、自身の位置と向きを把握することができます。
  2. 拡張現実 (AR): ARアプリケーションで物理的なオブジェクトに対して仮想のオブジェクトや情報をオーバーレイ表示する際に、AprilTagを使用して物理的なアンカーポイントを提供します。
  3. 空中撮影: ドローンやその他の航空機を用いた空中撮影において、AprilTagを地上の目印として利用し、撮影の精度を高めるために位置情報として活用します。
  4. 工業オートメーション: 製造業の自動化されたプロセスにおいて、部品や製品の正確な識別、トラッキング、位置決めにAprilTagを使用します。
  5. 人間とロボットのインタラクション: ロボットが人間の動作や指示を正確に理解するために、人間が身につける衣服やアクセサリーにAprilTagを取り付け、ロボットによる追跡や反応の精度を向上させます。
  6. ドローンを用いた測量: ドローンを使って広範囲の地域を測量する場合、地上に設置したAprilTagを利用して、ドローンの正確な位置決めを行い、高精度な空中写真やデータ収集を実現できます。

AprilTag 評価まとめ

長所
 ・高度な検出能力
 ・処理の軽さ 及び 処理の明瞭性
 ・オープンソース
 ・安価に使用できる可能性がある
 ・距離や角度の演算が可能

短所
 ・明暗に弱い 
 ・完璧な精度は求められない
 ・汎用性は乏しい。現状開発を前提としたタグ

色々な活用案がありますが、カメラを用いたセンシング技術としては優秀と判断しています。
ただし、世の中には様々なセンシング技術がありますので、AprilTagに拘り過ぎず様々な選択肢の中から選ぶようにします。

そのなかで、この案が優秀と判断される場合、活用すると良いと考えます。

2024/10/11 コメント追記
 明暗 及び 精度については、カメラ精度 及び 検知処理のコンピュータのスペックに大きく依存します。

AprilTagはミシガン大学によって開発され、BSDライセンスの下で提供されており、著作権表示およびライセンス条項の遵守が必要です。
弊社の技術記事は、良識のある範囲で断りなくリンクや引用を行っていただいて構いません。