製造業の見える化の重要性とメリット

こんにちは!株式会社IXEの古賀です。この度、数年前にお客様向けに作成した資料を基に、皆さまに役立つ情報をインターネットで公開することにしました。現場での経験に基づく実践的な内容を盛り込んでおりますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです!

見える化は手段であり目的ではない

工場のIoTやITシステムを活用した「見える化」は、目的そのものではなく、課題解決やスマート工場化の実現を目指すための手段です。
私は「見える化」を、スマート工場化への第一歩と位置づけています。そして、その先のステップを見据えた現場のIT化に取り組むことが重要だと考えています。これまでの工場のIoT化やシステム開発における成功体験と失敗体験から得たノウハウを共有しますので、ぜひ自社の工場改善に役立ててください!

工場をシステムで見える化する3つのメリット

見える化を導入することで、現場を定量的に把握できるようになり、人の手を減らしつつ最大限の効果を得ることが可能です。具体的には以下のメリットがあります。

  1. 生産性の向上
    作業時間や設備稼働時間を正確に把握し、ボトルネックの特定や改善が可能になります。
  2. 品質の向上
    不良品の発生原因を迅速に特定し、問題の早期発見と対策が可能です。
  3. 管理レベルの向上
    現行システムと連携し、入力作業の自動化によるミス削減とリアルタイム管理を実現します。

これらの効果により、コスト削減や効率化が進み、現場全体のパフォーマンスを向上させることができます。

深掘り:見える化の具体的な成果

1. 生産性向上の具体例

IoTやシステムで各工程の作業時間や設備稼働データを取得することで、IE活動(作業改善活動)の分析に活用できます。
例えば、以下のような課題が解決できます:

  • 作業者の動きや設備稼働状況の可視化
  • 工程全体のボトルネック発見

また、「チョコ停」(短時間の予期しない停止)などの頻度や内容を把握することで、問題点の発見と改善を加速できます。

2. 品質向上の具体例

IoTで生産や検査データを収集することで、以下の対応が可能になります:

  • 不良品発生の要因を特定
  • 作業ミスの減少
  • 不良品のリアルタイム検出と早期対策

これにより、不良品の削減はもちろん、品質のばらつきを抑えることで顧客満足度を向上させることができます。

3. 管理レベルの向上

手動で行っている現場作業の入力や設定をIoTで自動化することで、以下の効果が期待できます:

  • 入力ミスの削減
  • 在庫管理や生産計画精度の向上

現場作業者による実績入力やプロセス情報の設定を行っていませんか?
IoTを活用することで、実績入力などを自動化できます。入力する手間を省けるのはもちろんのこと、入力ミスの削減も可能なので一石二鳥です。現場の生産性向上や品質向上の改善にとどまりません。ミスや漏れが無くなり、リアルタイム化が進むので、在庫管理精度や生産計画の精度向上も可能です。
IoTやシステムを効果的に導入・活用するために必要な3つのこと製造業は製造する物品によって、設備・工程・人の配置等まったく異なります。さらに、同じ種類の製品を作っていても、自社と他社ではまったく異なった生産活動を行っています。100社あれば、100通りの生産方法・生産工程があります。つまり、自社に適したIoTやシステム化による「見える化」は自社で考えて実現していかなければいけません。
ここで、自社でIoT・システム化で、効果的に見える化を実現するためのポイントをお伝えします。

ポイント1 最初はスモールスタート

最初から多くの機能や高度なグラフツールは一切不要です。現場の生データ(見える化の元となるデータ)をエクセルで見ることができれば十分です。もしも見える化したデータの中で、日常的に監視したいデータが発生・存在する場合に、グラグや集計機能を追加していきましょう。
私はエンドユーザからの要望で多くの見える化ツールを作りました。しかし、残念ながら「開発したけど誰も使用しない見える化ツール」も少なからず有りました。「使われ続ける見える化ツール」と「使われない見える化ツール」の差は、日常的に監視する価値があるかどうかです。日常的に監視する価値がないとツールは使用されません。使われるデータというのは、グラフ化されていなくても各スタッフが日常的に活用し始めます。
日常的に使われるデータであれば、グラフ・集計機能を構築する。程度でよいと思います。

ただ、不良の状況を製品毎・設備毎に監視したいといった、データの解析が大変であれば、最初からグラフや集計機能を
つけて良いでしょう。IoT化、システム導入の目的を考え、状況・費用対効果に応じて、必要な機能をITシステム投資しましょう。

ポイント2 10年後の無人化を見据えた現場のIT化

工場のIT化は1年~2年で終わりません。継続して続けるものだと考えてください。
工場のITシステム化のSTEPは次のようになっています。

今回の記事は「見える化」に焦点を絞っておりますが、見える化がある程度進んだあとのことを考慮していきましょう。
見える化が進むとどうなるか?現場作業者はIoTやシステムで見える化されたデータを使って仕事を始めます。そして、その先にはその仕事すらも自動化していくことになります。
例えば、レトルトカレーの工場があったと仮定します。最初は、検査工程にて、糖度計を用いた味の検査をデータで見える化します。
すると品質管理スタッフは、より均一な製品を作るために糖度の傾向を見て、加熱時間を増減や材料(材料品質が完全に均一と限らない。)の配合量の調整を行うでしょう。そして、品質管理スタッフが行っていた調整作業すらも、AIなどを用いてコンピュータで自動補正する仕組みを作れば、より品質が安定したレトルトカレーが量産可能になります。また、不良が発生した場合は発生原因工程・設備を特定して、自動停止することも可能です。

このように私のこれまでの開発経験を生かしてスマート工場を見据えた見える化の実装方法を提案してまいります。
具体的な見える化手法は今後の記事にて紹介していきます。

ポイント3 見える化の対象と優先度

世の中には様々な見える化に関する情報がインターネットに存在します。例えば、作業時間の見える化・品質見える化・設備故障の予兆管理などです。
考え出すとあらゆるものが見える化の候補として挙がってくるので、どれから手を付けるべきか・・と頭を抱えてしまうでしょう。
私の経験によるIoT・システム化の難易度とシステム化によって見える内容を下表にまとめました。この表を参考にして自社に適したITによる見える化を推進してください。

設備故障の予兆管理についての私の見解

設備の故障原因は多岐に渡ります。例えば、

  • 振動
  • 温度
  • サイクルタイム

画像から故障を予兆・・・というのも考えられますが、それだけではすべての故障に対応できていないと考えています。もちろん、予兆できれば最善です。生産トラブルによるリスクを減らすことが出来ます。ただし、以下のことを考慮して実施すべき内容と考えております。

  1. 故障時に発生する損害と発生確率
  2. 設備故障の予兆管理運用に関する費用と検出率

弊社の技術記事は、良識のある範囲で断りなくリンクや引用を行っていただいて構いません。

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