社内ITシステム 内製化の成功ポイント

こんにちは、IXEの古賀です。

今回、近頃話題である社内ITシステムの内製化について私なりの私見・意見を交えて解説していきたいと思います。
ぜひ、参考にしていただき、内製化にトライしていただければと考えております!

はじめに — なぜ今、内製化が注目されているのか

日本の製造業では長年、ITシステムの開発・運用を外部のSIer(システムインテグレーター)やソフトウェアベンダーに委託するのが一般的でした。しかし近年、この構造に変化の兆しが見えています。

その背景にあるのは、主に以下の3つです。

  • DX推進の加速:経済産業省のDXレポートを契機に、デジタル化への投資が一気に進んだ。外注だけでは変化のスピードに追いつけないと感じる企業が増えている。
  • ベンダーロックインへの危機感:「システムのことはベンダーしかわからない」状態では、コスト交渉も改修依頼も思うようにならない。
  • 人材確保の変化:ITエンジニアの採用が以前より現実的になってきた。大学・専門学校卒のエンジニアを直接採用する製造業も増えている。
  • AIによるコード生成:AIによるコード生成(GitHub Copilot等)によって、少人数での内製化がより現実的になっている

こうした流れの中で「自社でシステムを作れるようになりたい」という声が高まっています。ただし、内製化はゴールではなく手段です。まず、自社にとって本当に内製化が必要なのかを冷静に判断することが重要です。

内製化のメリット

主なメリットは下記のとおりです。

スピードが上がる
外注の場合、仕様決め→見積り→発注→開発→納品というプロセスが必要で、小さな修正でも数週間かかることがあります。内製化すれば、「今日気づいた問題を今日直す」ことも可能です。製造現場では日々の変化への対応速度が競争力に直結するため、これは大きなアドバンテージです。

優秀なエンジニアだったら、課題検出→1週間後対応なんてのもザラに可能になります。(もちろん、リスクに応じた品質テストも重要です。)

② ノウハウが社内に蓄積される
外注し続けると、システムに関する知識がベンダー側にしか存在しない状態になります。内製化すれば、業務の仕組みとITの知識が同時に社内に蓄積されます。これは長期的に見て非常に大きな資産です。

また、特定の外注に依存しないことで、外部ベンダーから足元を見られるような事が少なくなります。
特にローコード、ノーコードが非常に流行っておりますが、”簡単に出来ることは簡単な事しかできない。複雑な事をやろうとした場合、より複雑になってしまう”ということを理解したうえで使用しましょう。
BIツールなんかの見える化系ツールは照会に特化しているため、おすすめです。

③ コストを中長期で最適化できる
初期投資は大きくなりますが、継続的な改修・運用コストは大幅に下がるケースが多いです。特に、月次の保守費用や軽微な改修費を何年も払い続けている場合、内製化のROIは高くなります。

現場ニーズに細かく対応できる
現場のオペレーターが「ここのボタン位置を変えてほしい」「この項目を追加したい」と言ったとき、内製チームがあれば即座に対応できます。外注では「要件定義書を書いて…」という手順が必要で、現場のリアルな声が反映されにくいのが現実です。
自社内の社員でやる場合、それらのニーズに解像度高く対応 かつ 細かく確認しながらの開発が可能なのも強みです。

ですが、これらのメリットばかりに目が行きがちだと、後々後悔する場合もあります。デメリット踏まえた検討が非常に重要となります。

内製化のデメリット・よくある落とし穴

見落としがちなリスクは下記のとおりです。

① 人材確保・育成のコストが重い
内製化で一番の壁がここです。優秀なITエンジニアの採用は競争が激しく、特に地方の製造業では難しい場面が多い。採用できても、製造業の業務知識を覚えてもらうのにさらに時間がかかります。

また、特にITエンジニアというのは、レベル差が非常に大きい業界です。Aさんは1ヶ月の間に10個のタスクがこなせても、Bさんは1ヶ月の間に1個のタスクも完了できないというケースも多々あります。いや、これが普通だと思って下さい。
そのため、安く経験の少ないエンジニア よりも 結果的に高くても経験のあるエンジニアのほうが、対成果で見た時は安価になる場合が幾度もあります。
新規にIT職を雇う場合は、これらを留意の上雇う事が重要です。

② 「作れる」と「運用できる」は別問題
システムは作るより運用・保守の期間のほうがはるかに長い。セキュリティアップデート、障害対応、バックアップ管理——これらを継続的にこなせる体制が必要です。「作ったはいいが誰もメンテできない」という状態は本末転倒です。

社員で開発するにしても、リスク分散を図りながら推進することがポイントとなります。

担当者への依存(属人化)リスク
内製チームが小規模な場合、特定の担当者がいなくなるとシステムが止まる、というリスクがあります。これはある意味、外注のベンダーロックインと同じ構造です。ドキュメント整備とナレッジ共有が必須になります。

この問題についても、社員で開発するにしても、リスク分散を図りながら推進することがポイントとなります。
このあたりは企業規模によっても判断が変わってくるポイントになります。

④ 技術の陳腐化リスク
ITの世界は変化が速い。内製チームが日々の業務に追われていると、新技術へのキャッチアップが遅れます。5年前に作ったシステムが「誰も触れないレガシー」になるリスクは常にあります。

ただ、実際の現場のシステムを見ていると10年稼働等も決して珍しくはありませんが、20年物の中規模~大規模システムになると、リプレイスに多くの費用が発生する場合もあります。しっかり、維持・管理していくことがポイントです。

内製化を成功させる5つのポイント

①「全部やろう」としない — スコープを絞る

いきなり基幹システムの内製化を目指すのはリスクが高すぎます。まずは「このレポート作成ツールだけ内製する」「このデータ収集部分だけ」と、小さく始めて成功体験を積むことが重要です。

特に小規模ツール程度しか開発経験が無いまま、大規模な機関システムの設計を着手する場合、かなりのリスクを伴います。
まずは、業務にリスクの少ないITツール→業務にリスクを伴うITシステム→社内の中心になる機関システムと、ステップを踏んていくことが重要です。

②業務を知っているエンジニアを育てる(または採る)

製造業の内製化で成功しているケースの多くは、「工場の現場も知っているエンジニア」の存在が鍵になっています。業務知識とIT知識の両方を持つ人材、あるいはそれぞれの人材が密に連携できる体制が理想です。

古賀のおすすめの案としては、社内のITに興味がある人材を募集することです。うまくいけば業務知識を有したITエンジニアが誕生するわけです。
言い方が悪いですが、外部から経験済みITエンジニアを雇うより、低コストで雇う事ができることがポイントですし、新規雇用するよりも人柄を事前に知っておけるのはメリットです。

③外注しながらノウハウを移管する「並走期間」を設ける

いきなり外注をゼロにするのではなく、外注ベンダーと一緒に開発しながら社内エンジニアが学ぶ期間を設けるのが現実的です。コードレビューや設計会議への参加を通じて、ノウハウを計画的に吸収していきます。

④ドキュメントとコード品質に投資する

内製チームが小さいほど、「書いた本人しかわからないコード」になりがちです。コーディング規約の整備、READMEの充実、設計書の更新——地味ですがここを怠ると、数年後に大きなツケが回ってきます。

ここは必ず遵守していきましょう。システム構成図・システム俯瞰図・ネットワーク構成図などは”必ず”作成するようにしてください。
このような既存システムの保守や対応をやってくれるベンダーは限られていますが、何もドキュメントが無いと対応してくれない会社も多くなります。

経営層の理解と長期コミットを取りつける

内製化は1〜2年では成果が出にくく、3〜5年の時間軸で考える必要があります。途中で「コストがかかりすぎる」と打ち切られると、中途半端なシステムだけが残ります。経営層に対して、短期コストと長期メリットを数字で示すことが重要です。

失敗事例から学ぶ(実例ベース)

失敗例 ①「エース社員」頼みで進めた内製化

ある中堅製造業では、IT知識のある社員(A氏)が中心となってシステムを内製。ところが、A氏が転職したことで、誰もシステムを触れなくなった。ドキュメントはほぼ存在せず、結果的に全面的なシステム再構築を余儀なくされた。

教訓:属人化は外注のベンダーロックインと同じ問題を社内に持ち込む。最低2名以上でチームを組み、ドキュメント文化を根付かせることが必要。

失敗例 ②「安く作れる」と思ったら高くついた

人件費だけ計算して「外注より安い」と内製化を決定。しかし、開発環境の整備・ライセンス費用・学習コスト・テスト工数を考慮しておらず、最終的に外注より1.5倍のコストがかかった。さらに納期も大幅に遅延した。

教訓:内製化のコスト試算は「表に見えない費用」を含めて試算する。少なくとも開発工数×1.5〜2倍を見込んでおくことが現実的。

失敗例 ③現場を無視した「IT部門主導」の内製化

IT部門が主体となってシステムを作ったが、現場の工程リーダーへのヒアリングが不足。「使いにくい」「実際の作業フローと合わない」と現場から不評を買い、結局ほとんど使われないシステムになった。

教訓:IT部門と現場の連携は必須。「作る側」と「使う側」が初期段階から協力する体制を作ること。

「全部内製」は現実的か? — 外注・SIerとの上手な棲み分け方

結論から言えば、「全部内製」を目指す必要はありません。重要なのは、何を内製して何を外注するかの戦略的な判断です。

カテゴリ内製向き外注向き
業務との密着度現場に密着した小回りツール
(報告書自動化、データ収集など)
業界標準のパッケージで代替できるもの
変更頻度仕様変更が多く、スピード対応が必要なもの一度作れば長期間安定稼働するもの
専門性自社の業務知識が競争優位につながるもの高度な専門技術が必要(セキュリティ、インフラ等)
リスク失敗しても影響範囲が限られるもの基幹業務・会計など、障害が許されないもの

たとえば製造業なら、「工場の稼働状況を可視化するダッシュボード」や「IoTセンサーのデータ収集ツール」は内製向きです。一方で、会計システムや人事管理システムは、完成度の高いパッケージや専門ベンダーに任せたほうが合理的なケースが多いです。

💡 ハイブリッド戦略の考え方

  • コアな業務ロジックとUI部分は内製
  • インフラ・セキュリティ・大規模基盤は外注またはクラウドサービスを活用
  • 新技術の検証・導入初期は外注パートナーと並走

それでも外注するなら:良いパートナーの選び方

内製化を進めながらも、外注が必要な場面は必ずあります。そのとき、どんなパートナーを選ぶかが内製化の成否を左右することもあります。

選ぶべき外注パートナーの特徴

  • 自社業界への理解がある
    製造業の場合、工場の現場や製造プロセスを理解しているベンダーかどうかは非常に重要。「要件を言えばなんでも作ります」ではなく、「この業務フローならこういう設計が合います」と提案できる会社を選ぶ。
  • 技術をオープンに共有してくれる
    内製化を支援する姿勢があるか。「ブラックボックス化して依存させよう」という会社ではなく、コードや設計を丁寧に説明してくれるパートナーが理想。
  • 小さく始められる
    最初から大型契約を求める会社より、PoC(概念実証)や小規模案件から試せる会社のほうが信頼できる。
  • コミュニケーションがフラット
    「御用聞き」スタイルではなく、問題点を正直に言ってくれるパートナーを選ぶ。担当者との相性も重要。
  • 保守・運用まで視野に入っている
    作って終わりではなく、システムが動き続けることを一緒に考えてくれるか。

⚠️ 要注意サイン

  • 見積りが「一式」でブラックボックスになっている
  • 要件定義に時間をかけずに「すぐ作れます」と言う
  • 担当者が毎回変わる
  • 納品後のサポート体制が不明確

まとめ

内製化は「コストを下げる魔法」でも「外注をやめること」でもありません。

自社の競争力に直結する部分を自分たちでコントロールできるようにするための取り組みです。

  • 内製化のメリットはスピード・ノウハウ蓄積・コスト最適化
  • デメリットは人材確保・属人化・技術陳腐化のリスク
  • 成功の鍵は「小さく始める」「並走期間を設ける」「経営層の長期コミット」
  • 全部内製を目指さず、外注と上手く棲み分けるハイブリッド戦略が現実的
  • 外注パートナーは「業界理解」と「技術のオープン共有」を軸に選ぶ

メリット・デメリット 及び 長期的な視点での内製化要否の検討をしっかり行うことがポイントとなります!


IXEでは、内製化に向けた技術支援や、難しい部分だけのスポット開発も承っています。まずはお気軽にご相談ください