農業・漁業へのDX支援・模索

背景と目指す場所

一次産業の労働力不足問題の解決を目指し、IXEはデジタルトランスフォーメーション(DX)を用いた支援システムの開発に着手しました。
特に電力供給が難しい場所や、広範囲での作業を行う方々へのIT支援を目指し、試作機の開発を実施。

試作機 開発前調査

開発初期に、4件の農家へ直接足を運び、現地の意見や要望をヒアリングしました。調査対象地域は福岡県柳川市です。
これにより、現状の農業環境やITの導入状況について深い理解を得ることができました。
ビニールハウスについては、私が想定していたより、かなり自動化が進んでいます。
反面、自動化は進んでいるものの、ITシステムを活用した生産はまだ途上のように感じました。
また生産する野菜・果物によっては、昔ながらの製法で電源等もない環境で生産されている場合もございました。
水田については、調査対象地域では自動設備は無い状況でした。

ハウス栽培 イチゴの苗
ハウス栽培 アスパラガス
ハウス栽培 その他果実
水田 水口の状況
ポンプ小屋
ハウス 灌水パイプ

調査・ヒアリングした結果、特に印象的だったのは農家の方々の「野菜・果物に対する情熱」です。
一般消費者が想像している以上に、細かな気配りを行っていらっしゃいました。
水の量/雑草/虫への対策/温湿度/日照/土壌/天候/肥料の量/栽培間隔 などなど、多くのことに気を配って生産されていらっしゃいました。

より一層、何らかの形で貢献できないか。という思いが強くなりました。

試作機 特徴

上記調査結果を元に、試作機1号を開発・製造を実施。特徴としては下記の通りです。

・屋外での使用を前提とした環境に配慮したハード設計
・電源を必要としないソーラー発電方式
・セルラーネットワーク(LTE/4G)を用いたネットワーク通信
・現場センシングデータ(温湿度/照度等)のスマートフォン閲覧
・スマートフォン操作による現場の灌水制御

試作機の開発は、通常業務時間外に実施。期間は約1ヶ月を要し、現在のところは試験的なレベルです。
試作機のソフトウェアとしては、大きく3つの構成で出来ています。

現場デバイス

・センシングデータ収集
・IO制御
 今回の試作機では灌水を想定した電磁弁制御
・クラウドサービスとの連携

クラウドサービス

・クラウドサービスはAWSを使用
・現場デバイスとの連携
・各送受信データの管理/蓄積
・スマートフォンアプリとの連携

スマートフォンアプリケーション

・現場センシングデータの閲覧
・現場灌水制御指示

試作機の検証と課題

試作機は、農業従事者 及び 電気専門家との立ち会いのもと、検証・レビューを実施し、下記の課題が浮き彫りとなりました。
課題1.大量設置時の通信コスト増大。通信コスト削減への取り組みが必要。
課題2.省電力化対応の必要性。現状無充電だと、3日程度しか持たないため、10日以上無充電でも動作できる仕組みが必要。
課題3.様々な分野に対応できるよう、汎用化 及び モジュール化の実現
課題4.セキュリティに配慮したシステム開発。試作1号時点でセキュリティは意識していましたが、更に強固なものにする必要があります。
課題5.可動部の機械設計 及び 各種センシング技術ノウハウ習得

農業従事者へ意見ヒアリング

電気専門家へのレビューと改善案ヒアリング

今後のビジョン

これらの課題を解決するため、改良型の試作2号機の開発を計画し、設計着手しています。
1号機で明らかになった課題への対応と同時に、スマートフォンアプリの機能強化を実施予定。
現在、ユーザー毎制御機能はありませんので、エンドユーザーが使用する事を想定して設計・開発を実施します。

3号機では、現場テストが可能な状態を目指し、複数の農家での実験を予定しています。
そして目先の目標は、試作4号機で製品化基盤となるシステムの開発です。

合計4回の試作を予定しています。今回は1号機ということもあり、弊社がこれまで持ち合わせていなかった技術・ノウハウの検証がメインでした。
今後は汎用性を考慮し、ブラッシュアップを主体とした試作開発を見込んでいます。

試作1号(今回実施)

弊社がこれまで持ち合わせていなかった技術 及び ノウハウの検証

STEP
1

試作2号

試作1号の結果を踏まえて、最終製品を見据えた設計 及び ソフトウェア構築。
今後はこの試作2号をベースにシステム開発を実施。
通信基盤・通信プロトコルについても、ここでしっかり基礎設計を行います。

STEP
2

試作3号

試作2号を基にブラッシュアップ実施 及び 
農家での実証実験実施。このタイミングで現場設置可能なレベルになる見込みです。

STEP
3

試作4号

これまでのノウハウを基に、最終ソフトウェアの準備 及び テスト実施。
ハードウェア開発を含めた製品初版の構築。

STEP
4

IXEはこれらの取り組みを通じて、社会のDX推進に大いに貢献することを目指します。

弊社の技術記事は、良識のある範囲で断りなくリンクや引用を行っていただいて構いません。